古い家屋を建て替えた30坪に満たない平屋住宅です。
十分に広い敷地で外部環境にほぼ左右されない条件のこの場所において、切妻屋根のシンプルな外観と回遊性をもって各室に繋がる内部空間を設計しました。

家の中心であるＬＤ・和室の天井は、軒が低くコンパクトな空間の中でも広がりを感じられるよう切妻屋根に沿った勾配天井に。その仕上げは羽目板に見立てて細長くカットしたラワンベニヤと凹型に溝を掘った杉の竿縁で構成しています。溝は施工性を高めるために正面から打つビスを目立たせない工夫ですが、同時に竿縁に表情が出てより素材感のある仕上がりとなりました。

仏間である和室は、玄関から直接アプローチできる客間としても、リビングの延長の部屋としても使える配置としています。パブリックとプライベートの曖昧領域であり、暮らしの中の小さな要求にも応えられる余白の空間になることを期待しています。

ＬＤの窓下の腰壁や和室の仏間板は解体前の家屋の広縁の床板など、玄関収納の板戸も解体前の家屋から取り出しておいたものを使っています。古い家屋は老朽化が激しいものでしたが、建物の至るところに無垢の木が使われていて、現代では貴重で味わい深いものがありました。施工の協力のもと、これらの素材が新しい空間に美しくおさまったことがこの住宅においてとても嬉しかったことのひとつです。

↓ 解体前にはこんな風景も・・・